肩腱板断裂は「即手術」じゃない?整体師が教える保存療法の重要性!!
腱板断裂
「肩腱板断裂で手術を勧められたけれど、できれば避けたい…」と悩むあなたへ
この記事では手術以外の選択肢、「保存療法の重要性」についてお伝えします。
腱板断裂とは
まず腱板断裂の「腱板」について説明します。
肩関節には「腱板:回旋筋腱板: rotator cuff 」と呼ばれる棘上筋、棘下筋、小円筋、肩甲下筋の4つの筋肉があります。

これらの筋肉は肩関節の安定性を高めるために非常に重要です。

棘上筋、棘下筋、小円筋、肩甲下筋これらが損傷あるいは断裂することを「腱板断裂」といいます。
特に、棘上筋の断裂が最も多く、棘上筋単体の断裂が63.5%、棘上筋と肩甲下筋の断裂が22.5%、棘上筋と棘下筋、肩甲下筋の断裂が5.5%、その他断裂が8.5%と報告されています。
また様々な断裂の形態があります。

この腱板断裂の状態に応じて、症状や治療・手術内容が異なります。
腱板断裂の症状
肩腱板断裂の症状は、痛みだけでなく「力が入らない」「音が鳴る」といった特徴があります。
1. 動作時の痛み(運動時痛):特に「腕を横から上げた時(ペインフルアーク徴候)」に強い痛みが出ます。
自力では上がらない: 反対の手で支えれば上がるのに、自分の力だけで上げようとすると肩の奥が痛んで力が入らないのが特徴です。
2. 夜間の痛み(夜間痛):寝ている時に痛みで目が覚めたり、痛い方を下にして寝られないといった症状です。
3. 筋力の低下と「ジョリジョリ」という音:腱が切れているため、肩を支える力が弱まります。
腕を保持できない: 腕を上げた位置でキープできず、ゆっくり下ろそうとしてもガクンと落ちてしまうことがあります(ドロップアーム徴候)。
腱板断裂の原因
肩腱板断裂の原因は、大きく分けて「急に起こるもの(外傷)」と「いつのまにか起こるもの(変性)」の2つがあります。
▶︎外傷
・転倒して手をつく
・肩を強く打つ
・重いものを急に持ち上げた瞬間に切れる
▶︎いつの間にか起こるもの(変性)
・加齢
・仕事やスポーツ、家事などで肩を繰り返し使う
・肩の構造や関節の動きの問題(インピンジメント)
Neerらは腱板が上方にある肩峰、烏口肩峰靭帯と肩鎖靭帯に衝突することが原因としており、腱板断裂が肩峰下インピンジメントを95%に合併していると報告しています。
肩を上げるときに肩峰(肩の先端の骨)と上腕骨の間で、腱板や滑液包が挟み込まれる状態

腱板断裂の発症頻度
| 腱板断裂の頻度(年代別) | ||||||
| 対象 | 49歳以下 | 50代 | 60代 | 70代 | 80歳以上 | |
| Yamamotoら 2010 | 683人 | 5.1% | 12.8% | 25.6% | 45.8% | 50.0% |
| Minagawaら 2013 | 664人 | 0% | 10.7% | 15.2% | 26.5% | 36.6% |
腱板断裂の頻度は、50代では10%、60代15〜25%、70代25〜45%、80代36〜50%の人に腱板断裂が認められたと報告されています。
やはり年齢とともに腱板断裂を起こす頻度が多くなっていきます。
「加齢とともに肩の痛みが徐々に増してくるのか‥」とお考えの方も多くいらっしゃると思います。
しかし、肩の腱が痛んだからといって、必ずしも痛みが出るとは限りません。
| Yamamotoら(2011) | ||||||
| 1366肩のうち283肩(20.7%)に腱板断裂が認められ そのうち 痛みのある断裂:症候性34.6%(98肩) 痛みの無い断裂:無症候性65.4%(185肩) |
||||||
| 対象 | 49歳以下 | 50代 | 60代 | 70代 | 80歳以上 | |
| 無症候性の割合 | 185肩 | 57.9% | 72.9% | 67.8% | 60.9% | 68.4% |
この結果から、腱板断裂があるにも関わらず、57〜72%もの人が痛みの自覚が無く過ごされています。
では、腱板断裂があるにも関わらず、痛みのある人と無い人では何が違うのでしょうか?
①非利き腕側の罹患
②インピンジメント徴候が無い
③外旋筋力の低下無し
3項目をすべて満たすものは 93.8%が無症候性断裂
つまり、たとえ検査で腱板断裂が見つかったとしても、
肩の動きを整えて「インピンジメント」を解消し、外旋筋をはじめとする周囲の筋力を維持・改善できれば、9割以上の確率で「痛みのない状態(無症候性断裂)」に戻れる可能性があるということです。
腱板断裂の治療
腱板断裂の治療には主に手術療法と保存療法の2つがあります。
特に保存療法は腱板断裂の治療を行う上で第一選択とされます。
6~12週で75%が症状改善したと報告している。徒手的理学療法の介入効果(推奨グレード:A)
このことから保存療法を行なった肩のうち6~12週(3ヶ月)以内に症状が改善したという方が、75%いるのです!!
1)外旋の可動域が52°以上
2)インピンジメント兆候陰性
3)棘上筋の萎縮が78%未満
4)棘上筋の筋内腱が保たれている
4つの要因のうち少なくとも3つを持つ患者は、保存的治療率は87%
しかし、3ヶ月以内に症状が改善しない方は、手術の適応になることがあります。
当院でのアプローチ
腱板断裂へのアプローチは主に、『肩への負担軽減』を目的としています。
具体的に、肩の炎症状態・日常生活での負担・姿勢からの影響・軟部組織の硬さ・関節の動き・筋力に対し中心にアプローチします。
1. カウンセリング(肩の炎症状態・日常生活での負担の確認)
「どこが痛いか」だけでなく、「いつ、どんな時に、どんな動作で痛むのか」を深くお伺いし、肩の状態を見極めます。
・生活習慣のヒアリング:作業姿勢、デスクワーク時間、運動習慣、ストレスレベルなど、肩に繰り返し負荷がかかる要因を特定します。
・既往歴と症状の分析::過去の怪我や病気、現在の症状の経過を詳しく把握することで、腱板断裂との関連や、施術の安全性を確保します。
2.姿勢・動作評価(姿勢からの影響・軟部組織の硬さ・関節の動き・筋力の確認)
姿勢・静的アライメント評価: 猫背、肩甲骨の傾き、反り腰、骨盤の傾きなど、身体のバランスを分析し、肩への負担をチェックします。
動作・動的アライメント評価:肩の様々な方向の動きを確認します。肩の動きだけでなく、肩甲骨や背骨、骨盤の動きを確認し、どの筋肉や関節の動きが悪くなっているか(運動機能障害)を特定します。特に、肩甲骨や胸椎(背中の上部)といった肩と関連の深い部位の連動性(キネティックチェーン)を細かく評価します。
ベッド上評価:施術者が可能な範囲で肩の動きを確認します。動きの制限がどこにあるか?どの関節の動きが悪くなっているのか?を細かく評価します。
3.施術
(1)ストレッチ・手技(インピンジメントの改善)
動作評価で固くなっている筋肉や関節に対して、ストレッチや手技を行い、適切な関節の動きに戻します。

特に肩の後方や下方の筋肉が硬くなることで、腕を動かした時に上腕骨を押し上げインピンジメントを誘発することがあります。
(2)関節の動きの改善(インピンジメントの改善)
動きの悪い関節に対して、手技で誘導し動作改善を行います。

(3)筋力強化(外旋筋力強化)
腱板構成筋の筋力強化を行い、関節の安定性を高めます。

さいごに
ここまでお読みいただき、ありがとうございます。 「腱板が切れている」と診断されると、もう元には戻らない、手術するしかない……と絶望的な気持ちになるかもしれません。もちろん、断裂の程度や年齢によっては手術が最善の選択となる場合もあります。
しかし、今回ご紹介したデータが示す通り、「腱板の断裂=一生消えない痛み」ではありません。
断裂という事実は変わらなくても、肩本来の正しい動きを取り戻し、動きやすい肩の環境を整えることで、7割以上の方が痛みのない生活に戻れる可能性を秘めています。
私たちの役割は、その根本的な原因を解き明かし、一人ひとりの状態に合わせた「保存療法」を組み立てることです。少しでも不安や疑問があれば、一人で悩まずにいつでもお気軽にご相談ください。
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林 典夫:肩関節拘縮の評価と運動療法.28.2018
Walton J,Murrell GAC:Clinical tests diagnostic for rotator cuff tear.Tech Should Surg 13(1):17-22,2012. Kelly MJ,
公益社団法人 日本整形外科学会「肩腱板断裂」 https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/rotator_cuff_tear.html
Codman EA. Rupture of the supraspinatus tendon. JBone Joint Surg 1937; 19: 643-652.
Neer CS 2nd.Anterior acromioplasty for the chronic impingement syndrome in the shoulder: a preliminary report.The Journal of Bone and Joint Surgery. American Volume (JBJS Am).1972年 54(1): 41-50.
Yamamoto A, Takagishi K, Osawa T, Yanagawa T, Nakajima D, Shitara H, Kobayashi T.Prevalence and risk factors of a rotator cuff tear in the general.Journal of Shoulder and Elbow Surgery.2010年 19(1): 116-120.
Minagawa H, Itoi E, et al.Prevalence of rotator cuff tears as judged from left-right in one population.Journal of Orthopaedic Science.2013年18(5): 727-731.
山本 敦史:腱板断裂の疫学一症候性断裂と無症候性断裂一MB Orthop.24(3):1-5,2011.
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M Tanaka, E Itoi, :Factors related to successful outcome of conservative treatment for rotator cuff tears.Upsala Journal of Medical Sciences. 2010; 115: 193–200
